越前漆器ができるまで|木地・塗り・加飾の生産工程を図解でわかりやすく解説

越前漆器ができるまで|木地・塗り・加飾の生産工程を図解でわかりやすく解説

一つのお椀が食卓に届くまでに、どれだけの人の手がかかっているかご存じですか? 越前漆器は、木を削る人、漆を塗る人、絵を描く人――それぞれの工程を専門の職人が受け持つ「分業」によってつくられています。

この記事では、越前漆器の生産工程を、木地づくりから仕上げの加飾まで図解でわかりやすくご紹介します。明治時代に創業し、100年以上の歴史を持つ越前漆器 粂治郎の器で、それぞれの技法が実際にどう活かされているかもあわせてご覧ください。

越前漆器の生産工程|全体の流れ

越前漆器は産地全体で分業体制が確立しており、それぞれの工程が高度に専門化しているのが特徴です。大きく分けると「木地製作」「塗り(下塗り・上塗り)」「加飾」の3つの工程があり、木製の器と合成樹脂製の器とでは、つくり方が異なります。

木製の漆器木地製作下塗り上塗り加飾木地師下地・中塗りの塗師上塗りの塗師蒔絵師・沈金師▶▶▶▶完成合成樹脂製の漆器成型スプレー塗装印刷・転写樹脂を熱で型成形漆や化学塗料を吹付け絵柄を付ける▶▶▶完成

越前漆器の主な生産工程(木製と合成樹脂製の代表的な流れ)
※製品や仕上げによって工程・職人の分担は異なります

POINTなぜ「分業」なのか

一つひとつの工程に長年の経験と専用の道具が必要なため、それぞれの職人が一つの工程を極めることで、品質の高い器を安定してつくることができます。産地の中で木地・塗り・加飾の職人や工房が連携し、一つの器を仕上げていきます。

木地師

木を削り、組み立て
器の形をつくる

下地の塗師

塗りと研ぎを繰り返し
丈夫な土台をつくる

上塗りの塗師

漆を均一に塗り
美しい艶に仕上げる

蒔絵師・沈金師

模様や絵柄で
器に華を添える

工程1|木地製作(きじせいさく)

まずは器の形をつくる工程です。主な素材には、水目桜(ミズメザクラ)、トチ、ケヤキ、カツラ、ホオなどがあります。木は反りや割れを防ぐため、十分に乾燥させてから加工するのが一般的です。器の形によって、大きく「丸物」と「角物」に分かれます。

MARUMONO丸物(まるもの) KAKUMONO角物(かくもの)
主な器 お椀・丸皿・鉢など 重箱・お盆・お膳・文庫など
つくり方 木材をろくろで
回しながら削り出す
板を裁断して削り込み、
組み立てる
粂治郎の例 布着せ多用椀・吸物椀など 三段重・膳など

POINT合成樹脂の素地は「成型」

より手頃で丈夫な製品を届けるため、越前漆器の産地では伝統的な木製漆器だけでなく、合成樹脂や化学塗料を用いた製品も多く生産されています。合成樹脂の素地をつくる工程は「成型」と呼ばれ、プラスチックの粉を機械で熱加工して形づくります。木の粉を樹脂で固めた「木合(もくごう)」という素材もあります。

木合については「木合ってなんでしょうか?」でもご紹介しています。

工程2|手塗り(下塗り・上塗り)

塗りの工程は、下塗りと上塗りとで職人が分かれています。漆は一度に厚く塗ることができないため、薄く塗っては乾かし、研ぐ作業を何度も重ねていきます。

下塗り = 木地固め〜中塗り / 上塗り = 仕上げ上塗り中塗り下地(地付け・研ぎ)布着せ木地固め木地仕上げの漆・艶上塗りの土台下地を付けては研ぐ傷みやすい部分を布で補強漆を染み込ませ固める木を削った器の形※層の厚さは実際とは異なるイメージ図です

漆塗りの層の断面イメージ(工程や製品によって異なります)

POINT 01下塗り|器の品質を左右する土台

下塗りは、漆器の品質を左右する重要な工程です。木地に漆を染み込ませて固める「木地固め」、傷みやすい部分などに布を貼って補強する「布着せ」、下地を付けては研ぐ作業などを重ねていきます。塗りと研ぎを何度も繰り返し、ムラが出ないよう、職人が丁寧に漆を塗っていきます。

完成すると見えなくなる部分ですが、この工程を丁寧に積み重ねることで、漆器の堅牢性を高めます。

POINT 02上塗り|均一な塗りと乾燥の技

上塗りでは、漆を均一の厚さに塗る技術と、一定の温度・湿度を保って乾燥させる技術が求められます。漆は適度な温度と湿度のもとで硬化する性質があるため、温度・湿度を管理しながら乾燥させます。塗りの途中でほこりが付かないよう、作業環境にも細心の注意が払われます。

合成樹脂製の場合は、スプレーで漆や化学塗料を吹き付けて塗装します。

工程3|加飾(かしょく)

漆器に模様や絵柄を入れる工程を加飾といいます。越前漆器の代表的な加飾には「蒔絵」と「沈金」があります。

MAKIE蒔絵(まきえ) CHINKIN沈金(ちんきん) PRINT印刷・転写
道具 蒔絵筆 沈金刀(ノミ) 機械
技法 漆で模様を描き、
金・銀粉などを蒔いて
装飾する
模様を彫り、
金粉や顔料を入れて
漆で定着させる
印刷や転写の技術で
絵付けを行う
表情 金銀粉による
華やかな表現
彫り跡に沿った
繊細な金の線
均一な仕上がりで
手頃な価格
主な素地 木製・木合など 木製・木合など 合成樹脂製など

蒔絵には職人が筆で文様を描く手描きの技法があり、仕上げ方によって、磨いて艶を出す「磨き蒔絵」や、落ち着いた質感に仕上げる「消し蒔絵」などがあります。

木製と合成樹脂製、代表的な製造方法の違い

WOOD木製の漆器 RESIN合成樹脂製の漆器
素地 木地製作
(ろくろ・裁断・組み立て)
成型
(樹脂を熱で加工)
塗り 刷毛による手塗り
(下塗り・上塗り)
スプレーによる吹き付け
加飾 蒔絵・沈金など 印刷・転写など
こんな方に 職人の手仕事の器を
長く愛用したい方
手頃な価格で
気軽に使いたい方

※製品によって製造方法・塗装・加飾は異なります。

どちらが優れているということではなく、使う場面や予算に合わせて選べるのが越前漆器の産地の強みです。越前は、旅館や飲食店で使われる業務用漆器の一大産地としても発展してきました。

粂治郎の器で見る、越前漆器の技

ここまでご紹介した工程や技法が、実際の器にどう活かされているのか。粂治郎の器から5点をご紹介します。

01
越前塗り 六角金箔六瓢箸 溜

印刷蒔絵木漆刷毛塗溜塗

越前塗り 六角金箔六瓢箸 溜[1膳]

木製のお箸に漆を刷毛塗りし、瓢箪の柄を印刷蒔絵であしらったお箸。伝統の塗りと、印刷による加飾を組み合わせた一例です。

長さ23cm

¥3,520税込

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02
越前塗 溜内黒 布着せ多用椀

布着せ丸物木溜塗

越前塗 溜内黒 布着せ多用椀[1客]

下塗りの工程で布着せを施し、丈夫に仕上げた木製のお椀。外は深みのある溜塗、内は落ち着いた黒。汁物から小丼まで幅広く使えます。

150φ×68mm

¥22,000税込

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03
越前塗 沈金 鶴 パネル

沈金パネルインテリア

【越前塗】沈金 鶴 パネル[1個]

沈金作家・高野博代さんによる、鶴をモチーフにしたパネル。刃物で彫った線に金を定着させる沈金ならではの、繊細な表現が楽しめます。

374×374×20mm

¥37,400税込

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04
越前塗 溜内朱 三段重

角物木漆刷毛塗溜塗

越前塗 溜内朱 三段重

角物の木地に漆を刷毛塗りした、木製の三段重。外は溜塗、内は朱で仕上げています。木地・塗りの職人技が詰まった、長く使える重箱です。

18.2×18.2×高さ17.7cm

¥62,700税込

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05
手描き蒔絵 越前塗 貝入りこぼれ梅 溜内朱 三段重

手描き蒔絵角物木磨き蒔絵

【手描き蒔絵・磨き蒔絵】越前塗 貝入りこぼれ梅 溜内朱 三段重

全面に散らした梅を、職人が手描きの蒔絵で表現した三段重。貝のきらめきが華を添えます。木地・塗り・加飾、それぞれの職人技が一つになった逸品です。

18.2×18.2×高さ17.7cm

¥88,000税込

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よくある質問

一つの漆器ができるまで、どのくらいかかりますか?
器の種類や工程数によって大きく異なります。漆は薄く塗っては乾かし、研ぐ作業を繰り返すため、木製の漆器は多くの時間と手間をかけてつくられます。
越前漆器の産地では、合成樹脂製の器もつくられているのですか?
はい。越前漆器の産地では、伝統的な木製漆器だけでなく、合成樹脂や化学塗料を用いた製品も多く生産されています。粂治郎では、各商品ページの仕様表に材質(木・木合など)や塗装を記載していますので、お選びの際の参考にしてください。
布着せとは何ですか?
下塗りの工程で、傷みやすい部分などに布を貼って補強する技法です。器をより丈夫にするための、目に見えない手間のひとつです。
傷んだ漆器は直せますか?
漆器は塗り直しなどの修理ができる器です。粂治郎でも漆器の修理を承っています。

多くの職人の手を経て、食卓へ

  1. 越前漆器は、産地全体の分業で工程ごとに専門化している
  2. 木地製作・塗り・加飾の3工程で、一つの器ができあがる
  3. 木製と合成樹脂製では代表的なつくり方が異なり、用途や予算で選べる

器を手に取ったとき、その裏側にある職人たちの仕事に思いを馳せてみてください。越前漆器 粂治郎は、産地の技を受け継いだ器を毎日の食卓へお届けします。

越前漆器の歴史や魅力は「暮らしに寄り添う、用の美。福井が誇る伝統工芸、越前漆器」でもご紹介しています。